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New Super SLRの功罪とは!? SHIMANOのリムブレーキ規格の変遷と謎を(勝手に)たどる

L-TWOO R9 を導入するにあたって、色々足りないパーツを補う必要が出てきました。

クランク、スプロケ、チェーン……ここいらはこれまでの経験もありますし、そこまでお高いものを使うつもりもないので極力安く済ませます。

なんだかんだで、L-TWOO R9も含め、全部合わせて25,000円程度で揃えることには成功しましたが……。

結局悩みのタネとなったのは、ブレーキセットでした(;^ω^)

GIANT OCR1はもともとがロングアーチ対応のフレームなのです。

そして、L-TWOO R9のレバー比は、New Super SLR / SLR-EV 相当。手持ちのブレーキセットは全て旧式のSuper SLR相当ですから、互換性は保たれてますが安全性を考慮すると使えません。

ということで、色々市場調査をしましたところ、ロングアーチ対応New Super SLR / SLR-EV 規格ブレーキセット……。

なんと、市場に二種類しか存在しないという恐ろしい事実にぶち当たります。

ということで、中古で投げ売りされるブレーキの代表とも言えるSHIMANO BR-R561を、メルカリにて格安でゲットいたしました。
TRP RG957は前後で20,000円もする代物で、とても手が出る値段ではありませんからねw

さてSHIMANO BR-R561のほうですが、費用削減のためか完成車での採用事例が多いブレーキセットで、ほとんどの人がUltegra BR-R8000等に交換することが多いようです。
……現状の市場を考慮すると、ディスクブレーキは例外としても、リムブレーキタイプはショートアーチブレーキ対応のフレームがほとんど。
GIOSARAYAといった、クロモリを売りとしたアーバンライド寄りのクラシックなロードバイクならロングアーチ採用事例が多くて納得行くところですが……なぜか、ショートアーチ対応のフレームでも利用されていて、結果中古で流出しやすい。
ショートアーチ対応のフレームだったら当然ショートアーチのほうが効きが良いはずなので、そりゃみんな載せ替えるわ……という話になります。

しかし……なんでこんな事になったのでしょうか?
おそらく、TIAGRA105の間に位置する、ちょうどよい安価なブレーキセットが、SHIMANO BR-R561くらいしかこの世に存在しないからなんでしょう。

ショートアーチ対応のNew Super SLR / SLR-EV相当のSHIMANO社外製ブレーキセットも存在することは存在しますけど、絶対的な数は少ない。
そして、そんなブレーキのサプライヤであるTektroPROMAXの評判は、総じて良くない……。

なんか、引っかかるものがあります。

気になったので、色々掘り下げてみることにしました。

SLRとは

SLRは、Shimano Linear Response の略だそうで、SHIMANOのオフィシャルサイトに目を向けると、1986年の記事にその表記が見られます。

ロードコンポーネンツ SHIMANO 105発売(SLR搭載)
ブレーキの卓越した制動力とコントロール性を追求した機構である「SLR」を搭載した「ニューシマノ105」が発売。

聞きかじった情報から、ブレーキレバーにリターンスプリングを設けて操作を軽くした、ということだけは知っていました。

改めて情報を探してたら、地元カガワの自転車のコーナー清ちゃんのオーバーホール日記に以下のような記述が有りました。

引きの重さに関して言えば、軽くなったきっかけはSLRと称してシマノがブレーキレバーに柔らかいリターンスプリングを入れ、本体の方のスプリングを弱くしたものを世に出したのがきっかけである。

……ということは、SLR登場以前のキャリパーブレーキは、スプリングがもう一回り硬かった、ということになります。

仮にSLR以前のブレーキを現在運用しようものなら、強烈に重たいブレーキになってしまうわけですね、末恐ろしい話です(;^ω^)

シマノ 世界を制した自転車パーツ、という本を読むと、テフロン加工を施したワッシャーを噛ませてブレーキの引きを軽くした……とも書かれています。とにかくいろんな工夫を組み合わせて生み出された規格であったことは間違いなさそうです。

Super SLRとは

次なる規格、Super SLRがリリースされたのはDura-Ace 7700頃、すなわち20世紀末です。写真はUltegra 65007700系統のセカンドグレードになります。

SLR当時のリムブレーキは、シングルピボットキャリパー。

Super SLRではデュアルピポットキャリパーが主流になった、という点で違いがあるのは解ります。

しかしこの段階では、少なくともSHIMANOのみならず、サンツアー、ヨシガイ、MAVIC、Tektro、といったサードパーティのブレーキでの間には互換性がありました。引き代が同じだったんです。

Campagnoloはブレーキの開放ボタンがレバーの方に存在しますので、厳密には互換性は無いんでしょうけども、少なくともシマニョーロ運用をしていたときの印象としましては……引き代は同じで、何ら問題は有りませんでした。

New Super SLR / SLR-EVとは

ところが2008年頃、Dura-Ace 7900のリリースと合わせて発表されたNew Super SLRでは、それまでと違う引き代が採用されてしまいました。

レバー比がおおよそ5mmも伸びてしまったため、それまでのブレーキセットとの互換性が保たれなくなったのです。写真は今回購入したL-TWOO R9ですが、New Super SLR相当で、Ultegra 6500と比較しても明らかにレバー比が長いです。

SHIMANO自身は、新しいレバーと古いブレーキとの互換性は保たれてますよ……と銘打ってはいるのですが、同時に性能が85%まで低下してしまうと発表しているのです。

それは果たして、互換性が保たれていると言うレベルなのか??(;^ω^)

まぁ少なくともこの話はSHIMANO純正のブレーキセットに対してであって、サードパーティのことは考慮されておりません。会社の立ち位置としてはそれは当たり前のことだとは思います。
レース機材ともなれば尚の事です。
それは9000番台になってブレーキシステムはSLR-EVとしてさらなる進化を遂げることになることからも、その立ち位置は明白です。

ところが……。

New Super SLRが採用されたエントリーグレードが登場……したものの???

2010年代に入ってリリースされた、次の3つのグレードでもNew Super SLRが採用されてしまったから大変です。

  • Tiagra 4600 (2011年)
  • Sora 3500 (2012年)
  • Claris 2400 (2013年)

ただ採用されただけならまだいいんですが、問題はレバーの形状そのものにあります。

この3つのグレード……レバーの見た目だけなら、Dura-Ace 7800系統のデザインをそのまま踏襲しているのです。7900系統はそれだけコスト高だったんでしょうかね、エントリーグレードでは採用されずにガッツリ飛ばされるという憂き目にあってしまったのです。
写真では左が7800系統の105であるST-5600、右がClaris ST-2400となります。見た目や握りの形状などはほとんど変わりません。ただ、ブレーキのレバー比が根本から異なるのです。

7800系統のレバーは頭でっかちで、個人的な好みから言えば少し握りにくい印象を受けはしますが、Super SLR相当の規格として見れば、7700系統から正当進化を遂げた高品質なシリーズだと自分は評価しています。
が、これをこのままNew Super SLRのレバー比に変更してしまうと……。ブラケットからレバーを握り込む際には、強い握力が必然的に求められてしまうのです。結局レバーなんてテコの原理ですから、支点と作用点の間が開けば力点も伸びてしまうわけです。同じ形状なのに更にレバーの下の方を握らないとブレーキがかからないとか……エントリーグレードでこれはあんまりじゃないですか……?

一方、7900の場合ですと、頭でっかちの7800と比較しても握りがスマートなので、レバー比が伸びてもある程度カバーできたであろうことは容易に想像できます。
後続の9000以降で更に改善が図られ、もう一回り握りやすくなったとの世間の評価も考えますと、変速機周りを小型化し、ピボット位置を大胆に変更したSHIMANOの技術力は素晴らしいと感じます。

それだけに……同じ見た目でありながら、ブレーキフィーリングが異なるレバーをリリースするとは……これは技術力の塊たるSHIMANOからすれば結構な問題だと感じるんですが……。

更に更に、見た目が同じなだけに、商品としてもいろんな誤解が生じたのではないかと推測されます。
SHIMANO自身も互換性を謳ってますからね、古いSuper SLR対応のサードパーティ製のブレーキと合わせたエントリーバイクが、当たり前のように多数販売されてきたと思うんですよ。

……そして聞こえてくるのは、TektroPROMAXを対象とした「サードパーティのブレーキは効かない」という声です。

効くわけ無いですよね、レバー比も違えば握りにくくもなってるわけですから(;´Д`)

皮肉なことに、ブレーキは105以上がいいだとか、そもそもロードバイクは105以上、それ以下のグレードはダメだ……といった世間の評価が聞こえ始めた時期と、上記グレードのリリース時期は、概ね合致するのです。

そりゃね、SHIMANOの純正ブレーキと比較すれば、耐久性という観点でいくとTektroPROMAXSHIMANOに劣る印象を受けます。実際へたりましたからこの評価は間違いないです。しかし、決して性能が極端に悪いというわけではないはずです。なので、軒並みサードパーティを否定するかのような空気が結果として蔓延してしまったのはいかがなものか、と思うところがあるわけです。

これはSHIMANOの失敗なのか……新型に置き換えられ、軒並み改善された今となっては真相は闇の中ですが、正直いただけないなというのが個人的な感想です。

意外と少ないサードパーティ製のNew Super SLR対応ブレーキセット、そして深まる謎

ここで不思議なのが、未だにサードパーティ製のブレーキセットでは、SHIMANONew Super SLR相当のレバー比を想定したものが、ほとんどリリースされていないという事実です。

いろいろ調べてはみましたが、これといった情報が見つかりません。前述のTRP RG957以外では、東京サンエスの2020年最新カタログにてPROMAXRC-472RC-476が紹介されているのを見つけた程度です。

ヨシガイあたりが出してたら絶対買ってたんですが……定番のBRS101も旧Super SLR相当の引き代ですし、長らくアップデートされていないというのが実情です。

市場はすでにディスクブレーキへと移行していってますから、仮にSHIMANOがキャリパーブレーキのリリースを縮小してしまうと、New Super SLRという規格自体が短命なものになってしまう恐れすらあります。

何より、「ロードバイクではSHIMANO製の105以上のブレーキセットを使おう」という気概が市場に溢れてますから、サードパーティも萎縮しているのかもしれません。そこで市場価値がない、と判断されているならば、新商品を開発する理由にはなりません。
むしろ、レガシーなSuper SLR相当のブレーキセットのほうが、ランドナーやスポルティフといったクラシックなバイク、あるいはピストや小径車などを所望する層に刺さりますから、こちらを撤退する、なんてことはありえないでしょう。

……いやはや、繰り返しになりますがなんでこんなことになったのか。

謎は深まるばかりです(;^ω^)

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