さて、フロントシングル運用中のLynskey Helix Proを改修し、フロント変速を可能な状態にしよう……と前回の記事でも書きました。
しかしながら、単純にフロントディレイラーを買い、チェンリングを2つに増やしたからそれで完了……というわけにもいきません。
まずは、目的をはっきりと見極めたうえで、最も適した構成を割り出す必要があります。
今回はギア比の考察を中心に書いていこうと思います。
本考察に際しましては、自作のギア比/速度計算機を利用しております。
クランクはノーマルか、コンパクトか?
本来、ギア数は用途によって決まります。
平地に強いギア構成にするのであれば、フロントは重め、すなわちノーマルクランクで、リアはギアとギアの歯数差が小さい、クロウス(クロス)レシオのスプロケである形のが望ましいです。
11速構成で考えますと、フロント53-39Tかそれ以上に対し、リア11-25Tといった構成がこれに相当するでしょう。
逆に坂に強いギア構成を求めるならば、フロントはコンパクトクランクで、リアはワイドレシオなスプロケを取り付けることが多いでしょう。
例として挙げるならばフロント50-34T、リア11-32Tや11-34Tなどがこれに相当するでしょうか。
コンパクトクランクにクロウスレシオ構成で坂道を攻める剛の者も、結構普通に居ると思います。
私はと言いますと、正直にわかを絵に描いたような自転車乗り、レースなどには縁のないしがない休日ホビーライダーです。
前提として、平地を時速60㎞/hで巡行するような豪脚を持ち合わせているわけでも無いため、コンパクトクランク相当で間違いないでしょう。
問題は、リアのスプロケットをどうすべきかです。
必要な最大ギア比と最小ギア比は?
ここで、現状のギア比を見てみます。
フロント46T、リア11-40Tの1×11で構成されていまして、最大ギア比が4.18、最小ギア比が1.15となっています。
現状、ワイドレシオであること以外では不満はありませんから、2×11にした上で、上記ギア比をそのまま担保できる構成というのが理想です。
もう少しかみ砕くと、トップギアはギア比4.00以上が最低一つあれば十分です。
整理すると……。
- フロントギアはコンパクトクランク(50-34T)相当を想定
- 最大ギア比は4.xx
- 最小ギア比は1.1x
- トップギアには4.00以上は一つあれば十分
この条件を満たしたスプロケを、市場から探すことが第一となります。
条件を満たすギアレンジの定義
市場漁りを始める前に、今一度調査軸を増やして検討を継続します。
次なる課題は、どれくらいのギアレンジが望ましいか、という点です。
現状1×11のギア比から割り出される前後ギアごとのレシオ値を見てみますと……なるほど、ワイドです。
ワイド過ぎるからでしょう、先日アップダウンのある道を走った時の感想が、気持ち悪いの一言でした。
一方、同じ道を走って気持ち良いと感じたのが、リア9速の通勤車、GIANT OCR1でのアウター縛り。
ギア比構成は次の通りになっています。
フロントがPCD130での事実上の最小構成であるセミコンパクトクランク(52-38T)、リア12-27Tとなっており、坂道には重すぎますが変速自体は非常に快調でした。
フロントシングル構成との間で大きな差があるとすれば、トップ側の歯数が1刻みになっているという点。
また、そもそもがフロントダブルであるため、有効段数が11~13もあるのです。
フロントシングルだと、1×11そのままに有効段数は11。
なんと、GIANT OCR1のほうが、ギアの組み合わせに関しては自由度が高いという結果になりました。
当たり前な話なんですけどね(;^ω^)
- 有効段数
- フロントの変速に伴い、全段数のうち重複するものを差し引いた段数。2×11=22段すべてが有効になることはなく、平均して14~15くらいが事実上の変速可能な段数になる場合が多い。
レシオ値も、トップを中心に十二分なクロウスレシオ構成であることが見て取れます。
ちなみに、GIANT OCR1は20年前のコンポであるUltegra6500を搭載してますので、コンパクトクランクはまだ存在しません。
なので、現状のコンパクトクランクに差し替えて再計算しますと……。
理想とするギア比に近づくことが出来ました。
……このGIANTのギア構成をベースに、9速を11速に底上げした形を目指せばよいのではないか。
そんな筋道が徐々に見えてきました。
リアカセットの市場調査
という事で、己の理想を実現するギア比を市場から探し出しましたら、以下の構成が最適値として、いったん導き出せました。
コンパクトクランク50-34Tにリア12-28Tの11速スプロケを合わせた構成です。
ところが……。
このスプロケ、SHIMANOではDura-Aceのみの展開になっているのです。
Dura-Aceのクランクを使ってはいますが、ぶっちゃけ見た目によるチョイスですから、無理して使っているというのが実情です。
更にスプロケで追加20,000円以上の出費は正直痛い……(;^ω^)
じゃぁ、別のスプロケでいいじゃん……となりますが、例えばUltegra R8000の11-28Tを利用するとなると、トップ11Tが結局無駄になってしまうのがもどかしい。
トップを使わないのであれば、10速TIAGRAの12-28Tを導入したのと何ら変わらないことになってしまいます。
一方、ジュニアスプロケット相当の14-28Tなんかも手としては考えられますけど、流石にトップが物足りないですね(;^ω^)
複数のSHIMANOのスプロケを混在させて無理くり作る……という手段も考えられますが、変速精度を著しく低下させてしまう恐れがあるためコレも却下。
ではどうするか……。
一旦SHIMANOから離れて、別のメーカーのスプロケットを調査対象に含めることにしました。
当然、シマノHGフリー11速用が選択肢となります。
SRAMはトップが軒並み11Tなので却下。
xDドライバーないしxDRドライバーが主流になりつつありますから、今後もトップが12Tのスプロケなど出る見込みはないでしょう。
TNIが出しているものとしてこんなのもありますが、お高い上に事実上の決戦兵器。
前者に至っては12-14-16-18-20-22-24-25-26-27-28……。
使い所が帰って見極めづらくなりました、却下です(;^ω^)
……。
……。
……。
……あれ、コレで終わり……?
いくら調べても、これ以外のスプロケが見つかりません。
11速環境では思いの他、トップギアが12Tのスプロケはそもそもバリエーションが少ない、ということが分かりました。
Campagnoloフリーだと12-29Tが存在するんですけどね……。
理想的な Chorus 12speed を参考にしてみる
ということでSHIMANOから離れてCampagnoloを調べてましたら、最も理想に近しい構成のコンポーネントの存在を知ることが出来ました。
Campagnolo Chorus 12speedです。
なんとCampagnolo Chorus 12speedには、48-32Tという、更にコンパクトなクランクが展開されているのです。
これに、12-29Tのカセットを割り当ててギア比を計算してみました。
びっくりするくらいに理想に近しいギア比がはじき出されました(;^ω^)
レシオ値もさすがCampagnolo。
抜かりのない見事な数値になっています。
有効段数も驚きの16~17。
選択肢が多すぎてよだれが止まりませんw
が、これはそもそも12速用、しかも現状の構成と規格がまるごと異なるCampagnoloですから、財力的に実現は難しい話になってきます。
導入するのは夢のまた夢、といったところでしょうか……。
……と、ここでピンときました。
Campagnolo Chorus 12speedのトップギアを外した状態と同じ11速のスプロケが見つかれば、それが答えなのではないか……。
ん?
Campagnolo……。
なにか、同じイタリアの会社で、調べ忘れているメーカーが有るような……。
ついに発見! Miche Light Primato 11x カセット
そう、Micheの存在を忘れてました!
Campagnoloと並ぶイタリアの老舗コンポーネントメーカーです。
Campagnoloにしか無い構成、12-29Tで再検索をかけたらついに出てきました。
Miche Light Primato 11x 12-29T シマノHGフリー用!
Micheは昔から、ギアを一枚ずつバラバラに組み合わせるスプロケットをリリースしていることで有名でした。
そんな中で、ドンピシャな構成が販売されていることを知ることができたのです。
このカセットを、コンパクトクランク(50-34T)に当てがったギア比を割り出すと、次のようになりました。
要件にピッタリマッチするではありませんか!
レシオ値もCampagnolo Chorus 12speedに引けを取りません。
しかも価格も、海外通販を利用すれば8,000円程度となかなかお手頃です。
有効段数も15~16と、1×11と比較すれば大幅な拡張となります。
スプロケはこれで決定しました!(*’ω’*)
必要なパーツ構成
ということで、検討結果を踏まえて、1か月ほどかけて、パーツをちまちま揃えていきました。
まずは、手持ちのDura-Aceのクランクに合うコンパクト用のチェーンリング50-34Tを中古で手に入れました。
途中、SRAM FORCE eTap AXSに浮気して失敗するという轍も踏みましたが、そこから軌道修正を行い、SRAM RIVAL22の不足分を揃えます。
リアディレイラーはミドルケージ、SRAMで言うところのWi-FLiをチョイスしました。
運用するのはリア12-29Tですからショートケージでも十分賄えそうな気がしますが、ここは念のため……。
以前導入していたものがまた戻ってきたような感じですね。
仮に1×12を導入してたとしても、有効ギア数を考えればそこまで費用対効果が高くないことは明白……。
本当にSRAM FORCE eTap AXSを買ったのは、理性を超越した狂気の沙汰だったとしか言いようがありませんね(;^ω^)
スプロケは前述の通り、Miche Light Primato 11x。
チェーンも、特別感を意識してKMCのX11SLのゴールドをチョイスしてみました。
その他バーテープなども一式そろえることが出来ました。
パーツが一通り揃ったところで交換作業開始ですが、それはまた次の記事にて。